イノベーション普及の国際的考察

『国際的消費者行動論』
第八章「異文化におけるイノベーションの普及」概論

International Consumer Behavior:
Its Impact on Marketing Strategy Development
Quorum Books, 1995.

新製品やサービスの普及過程は文化ごとに異なる。
一般的な普及過程とともに,異文化間の普及過程ごとの違いを詳細に理解すれば,
国際マーケティングの担当者は効果的な新製品の導入や消費者ニーズの充足が容易に行える。

ロジャース(1983)の製品普及過程理論に代表されるようなイノベーション普及アプローチは,
新製品の受け入れ状況や市場のポテンシャルに関して各国市場を分析する上では,
またマーケティング計画を策定するうえでも極めて重要である。

しかしこのアプローチは,異文化において新製品がどのように受け入れられ,
そして普及するかを判断し,マーケティング戦略を策定するためには有効なアプローチとはいえない。
そのため,普及過程に対し国別比較を行う研究が必要である。

物質主義の傾向や工業化,そして大胆な経済改革といった経済的な力は,普及曲線の形状に影響を与えている。
しかしSamli(1991)は文化が一国の一般的な普及過程を変化させる大きな要因になると主張する。

採用過程に関する理論の全体像を下図のように示すことができる。

認知的段階とは,消費者が情報を取得して処理し,財やサービスを評価する段階である。
感情的段階は,消費者態度の情緒的な側面に関わっている。
そしてこれらの要素は,行動の性向に関係する行動段階に影響を与える。

行動の性向と行動段階の間には外部要因と内部要因が影響している。
外部要因とは,たとえばその文化に広まっている環境に対する考え方やそれを受け入れる個々の消費者の傾向である。
内部要因とは,たとえば個人の性格や文化を通して浸透した個人の価値観である。

これまでAIDAモデル(Strong 1925),効果の階層モデル(Lavidge and Steiner 1961),
ロジャースのイノベーションと採用モデル,そしてコトラー(Kotler 1990)のコミュニケーション・モデルといった
反応階層モデルが登場してきた。
Samli(1991)の提示する反応階層モデルを用いることで,消費者がいかに認知,感情,行動の各段階を経るかを構造的に特定できる。
またこのモデルは,消費者が様々な形で製品の導入を知覚し,それを採用するかを示すことができる。

このモデルに基づき,Samli(1991)は新製品の普及過程を日本,韓国,中国,アメリカという4つの文化地域で実証を行っている。
またその結果を踏まえ,ハイテク新製品が,いかに売り出され,普及していくのかについて考察を行っている。

※本概論は,理論に焦点を充て作成しています。実証の詳細に関しては
『国際的消費者行動論』,第八章「異文化におけるイノベーションの普及」を参照のこと。

大石研究室
古川裕康 作成